新型肺炎の流行について(10)

 コロナウイルスによる感染症の拡大は、世界経済に深刻な影響を与えている。

世界の経済成長率ー3% 世界恐慌以降で最悪

 

 IMF国際通貨基金は、ことしの世界全体の経済成長率について、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、マイナス3%まで大幅に落ち込むという見通しを発表し、1929年に始まった世界恐慌以降で最悪になるという認識を示しました。

 IMFは14日、最新の世界全体の経済成長率の見通しを発表し、ことし、2020年については、3か月前に示した予想のプラス3.3%から、一気に6.3ポイント引き下げてマイナス3%まで落ち込むとしています。
 これは、未曽有の危機と呼ばれたリーマンショックの影響を受けた2009年のマイナス0.1%を大きく下回る水準です。
 内訳をみますと、アメリカがマイナス5.9%と、1946年以来、74年ぶりの水準になるほか、中国はプラス1.2%と、1976年以来、44年ぶりの低い成長が見込まれています。
 そして日本はマイナス5.2%と、2009年以来、11年ぶりの低い水準になるとしています。
 このほか、ヨーロッパでは、イタリアはマイナス9.1%、ドイツがマイナス7%、イギリスがマイナス6.5%に落ち込む見通しです。
 記者会見したIMFのギータ・ゴピナート調査局長は「経済の崩壊の規模と速度はかつて経験したことがない。大恐慌以来の不況になる」と述べ、世界全体の経済成長率がマイナス10%程度となった1929年からの世界恐慌以降で最悪になるという認識を示しました。

(2020/4/15 NHK NEWS WEB)

 

 世界全体が活動抑制の結果として、人々の往来が途絶え、観光・レジャーはもとより、物流や生産なども大きく活動が阻害されている。

 IMFの予測では、今年の前半で感染拡大が峠を超す前提のようであるが、その保証はない。現在の観光やレジャー産業への打撃は、今後、消費の縮小、その他の産業の業績の悪化、一部事業者の信用不安、新規投資の削減と縮小の連鎖を引き起こし、経済の悪化が累積的に進んで行くだろう。経済の悪化は、まだ始まったばかりなのだ。

 我が国でも、緊急事態宣言が全国に拡大されることになり、営業自粛の要請などが行われている。その結果、飲食店や観光産業などでは、まったく営業ができず、収入が途絶えてしまった事業者や従業員が大量に発生する事態が生じている。

 収入が途絶えてしまった人々の生活を維持するためには、現金の支給が急務である。

 政府では、ようやく国民全員を対象として一人あたり10万円の支給の方向を固めた。これに対して、経済同友会の代表幹事が、「電子マネーでの給付が望ましい」と発言した。

 政府・与党が新型コロナウイルス対策として国民1人あたりに10万円の現金を給付する検討に入ったことを受け、経済同友会桜田謙悟代表幹事は16日、報道陣の取材に応じ、「ほぼ条件をつけないで給付することは危機管理にスピードが必要なことを考えれば、いいことだ」と歓迎する考えを示した。

 同時に、タイムリーに配布することと、消費に活用されることが重要だとして、「電子マネーでの給付が望ましい」との考えを示した。現金給付ならば、貯蓄に回る可能性もあるが、電子マネーなら「消費力を維持するのにつながる」と強調した。

(2020/4/16 産経新聞

 

 今回の給付は、これまでの不況下における経済対策のように、経済刺激のために行うものではない。収入が途絶えてしまった人々に現金を支給し、生計を維持することができるようにするためのものだ。

 同幹事は支給された現金が貯蓄に回ることを危惧するが、感染防止が求められる現状では「不要不急」の行楽等に使用することは避けるべきであるし、今後、これらに要した経費は間違いなく税金で回収されることになるだろうから、収入に影響のない人々はむしろ貯蓄をしておくべきだろう。

 

 一方、神戸市の方は、当初は、「ジタバタしても始まらない」として、神戸市の「行事、催事、イベントなども基本的には予定どおり実施することが適当」、「展望もないままに都市の活動を停滞させないようにすることが必要」と述べていたが、今では「感染拡大防止のためには、人と人との接触をできる限り減らすことが重要であり、8割程度の接触機会の低減を目指すこととし、市民に対して以下について要請する。」(4月8日 神戸市対応方針 第6弾)と、180度の方向転換を行っている。そして、連日のように、市民に対して外出の自粛を迫っている。

 会食やレジャーなど確かに「不要不急」のものをあるだろうが、人々の生活を維持するために財やサービスの生産・流通は不可欠なものだから、一時ならともかく、長期にわたってこれらの活動を停止することはできない。皆やむを得ずやっていることなのだ。そうした中で、一方的に自粛のみを迫り、安全なところから他人事のように駅の人出の状況を事細かく観測して公表し、まるで悪いことのように発表し続けるのはいかがなものか。(それより、患者発生の状況の方をもっと具体的に公表すべきだろう。)むしろ、経済活動を維持しながら、感染防止につながるよう、マスクや消毒剤の供給に努める等に市は取り組むべきだ。働く市民を励ますべきだ。神戸市の姿勢は、国にべったりで、市民に寄り添っていない。

 また、感染症対応に当たる医療関係者への感謝の気持ちを表すとしてブルーのライトアップを行うなど、それらの活動こそ「不要不急」だ。市のホームページに、「BE KOBE」になぞらえて「STAY HOME」の合成画像を公表しているが、この緊急時にわざわざこのようなパロディー作品を作って公開するのはよい趣味とは思えない。