兵庫県知事が2万人収容アリーナ検討を表明(4)

 今回、井戸知事が検討を表明したのは、「大規模アリーナ」であるが、我が国の大規模イベントの会場にはどのようなものがあるのだろうか。

 一つは東京ドームなどのドーム球場である。東京ドームは我が国で最初に建設されたドーム球場で、1988年のオープンである。ドーム球場は、プロ野球の球団が本拠地を置いて試合を行う他、アメリカンフットボールやその他のスポーツの会場、コンサートや展示会などにも使用される。ドーム球場は、東京ドームの他、札幌ドーム、名古屋ドーム、大阪ドーム福岡ドーム西武ドームがある。これらは、いずれもプロ野球の球団の本拠地となっている。このうち、最後の西武ドームを除いた5つを「5大ドーム」といい、大会場を使用するコンサートの全国ツアーについて、「5大ドームツアー」などの言葉もある。ドーム球場の特徴は、まずなんといっても収容能力の大きさだ。たとえば、東京ドームの収容客数は、プロ野球開催時は46,000人、コンサートでは57,000人である。関西では大阪ドームがあり、プロ野球開催時で36,000人、コンサートでは55,000人である。

 収容能力も大きいが、その規模も大きくなる。大阪ドームでは、建築面積は33,800㎡で、総工費は696億円となっている。札幌ドームでは、建築面積55,168㎡、総工費422億円とされている。

 これに対して、アリーナの収容能力は、国内最大のものは、埼玉県のさいたまスーパーアリーナで、スタジアムモードで36,500人、アリーナモードで22,500人、横浜アリーナで17,000人である。ちなみに、さいたまスーパーアリーナの建設費は649億円である。

 このように比較してみると、アリーナとドーム球場では、収容能力が格段に違い、コンサートでもアリーナ級とドーム級と違う種別のものと扱われているようだ。実際に、アリーナでは、国内で有数の人気グループが使用しているが、世界的なミュージシャンはドーム球場でコンサートを行っており、アリーナはあまり使用していないようだ。だとすると、世界的なミュージシャンがコンサートを行うことによる世界での都市の知名度の向上を考えるのであれば、アリーナよりドーム球場であろう。札幌、名古屋、大阪、福岡がドーム球場を建設したのは、おそらくこうした都市格を高め、アピールすることも狙った面があるに違いない。

 今後、兵庫県に建設するべきは、大規模アリーナよりもドーム球場を第一に考えるべきだ。将来的には、ドーム球場もアリーナも両方ほしいところだが、ドーム球場は立地条件がきわめて限定される。したがって、まず、ドーム球場の建設場所を確保すべきだと考える。

 ドーム球場の建設場所は、県下では、神戸市のみなとのもり公園(旧神戸港駅貨物ヤード)が最適だと考える。というのは、ドーム球場で行われるイベントは、5万人前後の観客を一時に輸送することができる交通手段を近くに持たなくてはならない。ワールド記念ホールの観客数は、せいぜい8,000人の観客数であるが、ポートライナーではこれでも大混雑を来している。したがって、現在の交通状況を前提とすると、ポートアイランドに、そうした大規模集客施設を設置するのは不可能なのだ。今後、大容量の鉄道を敷設するならともかく、現時点では本土側に建設すべきだ。

 上記をみると、ドーム球場も大規模アリーナも建設費は、それほど違わない。ドーム球場であれば、関西圏には阪神オリックスなどのプロ野球チームがあるので、これらが使用することも考えられるだろう。特に、甲子園球場は、高校野球大会で本拠地が長期間使用できなくなるので、その受け皿として有用だろう。また、春から秋にかけて、プロ野球が主に使用するので、その期間のコンサートの実施等が可能となるだろう。

 建設は民間事業者に委ねるのがよいだろう。須磨海浜水族園の再整備も民間事業者が370億円の投資を行うことになっている。要は優良な計画でさえあれば、資金は十分にあるので、いかに魅力的なプランを立てるかにかかっている。夢のあるプランをたてて、適地を提供して事業者を募れば、実現は可能だと考える。

 これまで、神戸市のこうした施設の立地の考え方には問題があったように思う。大規模集客施設、大学などを、市街地の中心部ではなく、郊外につくってきた。その理由は、郊外であれば土地が確保しやすく、造成地の処分につながり、また、鉄道の需要対策として都心部へ通勤するのと逆の流動をつくることにあった。しかし、それらの施設は、結局は交通の便が悪く、十分に活用されない結果となった。また、市街地の空洞化を招くことともなった。仮に、グリーンスタジアム(現ほっともっとフィールドスタジアム)が神戸の中心市街地にあれば、オリックスの大阪転出も防げたかもしれない。これまでのように、施設を「空いている場所」につくるのではなく、「必要な場所」、「利用しやすい場所」につくることを考えなければならない。