須磨海浜水族園再整備 事業者決定過程について(1)

 神戸市は、須磨海浜水族園及び海浜公園のポテンシャルを活かした再整備により須磨海浜公園エリア全体の魅力を向上させることを目的として、PFI制度に基づく事業者公募を行い、この程、その事業者が決定した。採用されたのは株式会社サンケイビルを代表とする企業グループで、オルカショーを目玉とする内容であった。しかし、これに対して、料金が従来と比べ大幅に値上げとなり、市内の小中学生が無料で利用できる「のびのびパスポート」の対象からも除外されることから、周辺の住民等から反対運動が起きている。

 どのような議論をへて、事業者が決定したのか。事業者選定委員会の議事要旨が公開されているので、これを読んでみよう。

神戸市:須磨海浜水族園・海浜公園の再整備

 

 それによると、9月2日に開催された第3回目の委員会で事業者(優先交渉権候補者)が決定した。委員は6名で、うち5名が事業者Cグループ、1名が事業者Gグループの方が優れていると判断したとある。ここで、事業者Cグループとは、今回採用された株式会社サンケイビルを代表とするグループのことであり、事業者Gグループとは大和ハウス工業株式会社を代表とするグループである。

 Cグループのプランは、すでに公表されているとおり、オルカスタジアム、イルカスタジアム、アクアライブの3棟からなるプランである。それに対して、Gグループは、マーケットテラス、キッズテラス、グリーンテラス、スパテラス、ヘルステラス、水族館という多様な構成で、水族館は生態系を人工的に再現する生態系エコシステムの導入を目玉としていたようだ。

 委員会では、Cグループのプランに対してある委員から、集客を考えた場合、オルカは必需品であるが、イルカはやめて料金を引き下げできないかとの質問があった。それに対して、事業者から、海獣類・鯨類を代表するのはイルカであり、これに付加価値としてオルカを考えている、目指すべきところは日本有数の水族館をつくることにある。また、須磨水族園でイルカが大変人気の生き物で、このイルカがいなくなると市民が悲しむのではないかといったことからイルカなしの提案は考えていない、と答えた。また別に、オルカやイルカの飼育に対する反対論が欧米豪にあることから、インバウンドを目的とするプランとの整合性をどう考えるかという質問に対して、事業者側は、反対論があるのを認めた上で、世界で入場者数のベストテンの水族館はすべてイルカを飼育しており、世界の入場者数のベスト5のうち3つが、アメリカの入場者数上位3位の水族館にはいずれもオルカがいることを挙げ、オルカやイルカは、(水族館にとって)やはり大変必要な生物であると答えた。また、今後の計画として、日本有数の水族館をつくるという観点から、ベルーガシロイルカ)を飼育するベルーガ棟の建設も念頭にあるとの説明した。

 Gグループのプランに対して委員からは、施設の構成に統一感がないこと、集客の目玉がないこと、生態系エコシステムの実現性に対する疑問などが指摘された。

 以上のような議論を経て、Cグループ、すなわち、株式会社サンケイビルを代表とする三菱倉庫株式会社、JR西日本不動産開発株式会社、株式会社竹中工務店芙蓉総合リース株式会社、阪神電気鉄道株式会社、株式会社グランビスタ ホテル&リゾートのグループのプランが採用となった。

 なお、決定理由は、次のとおり発表されている。

決定理由

須磨海浜水族園海浜公園再整備事業の優先交渉権者(設置等予定者)選定にあたっては、2団体から提案をいただき、選定委員会において、実施体制、全体の整備・運営計画、施設ごとの整備・運営計画などを総合的に評価し、選定を行った。その結果、下記の理由などから上記団体が候補者として最適であるとして決定した。

・グループ全体として財務的信用力が高く、30年という長期の事業実施にあたり、安定した事業実現が見込まれる。

・地域住民の憩いの場としての公園と、観光集客の場としての都市型リゾートを両立させるという事業コンセプトが明確であり、具現化する仕組みも提案されている。

・展示生物の魅力に加え、代表構成団体が属するグループによる効果的な情報発信や、集客数が低迷した場合の大規模追加投資などにより、安定期で200万人(初年度250万人)という集客目標の達成が期待できる。

・松林の保全・育成、歴史・文化資産の保全活用が具体的に示され、現在の公園が持つ財産を活かした計画となっている。また、子育て世代が親子で楽しめ、多様な市民の健康づくりを促進する施設計画、ソフト展開が示されている。