神戸市のコンベンション政策(4)

 神戸商工会議所が神戸市に提出した2020年度要望書の中で、重点項目として「MICE 誘致強化に向けたコンベンションセンターの再整備」がある。

 

3.MICE 誘致強化に向けたコンベンションセンターの再整備について

 大阪・関西万博の開催に先駆け、大阪では、IR 基本構想と一体となった国内最大級の国際会議・MICE施設の整備が打ち出されるなど、近隣主要都市において、コンベンション機能強化に向けた動きが加速している。コンベンション都市を標榜する神戸としても、後れをとることなく、MICE 誘致の競争力強化を図るため、コンベンションセンターの再整備に向けた構想策定を急ぐとともに、誘致のインセンティブ策となるポートピア 81 記念基金の今後の活用方針を改めて検討されたい。

 

 大阪市は、IR(統合型リゾート)構想の中で、カジノとともに国内最大級の国際会議・MICE施設の整備を打ち出している。

 これは、コンベンション都市神戸の脅威になるだろうか。

 結論から言うと、ならないだろう。

 なぜならば、現在でも施設の規模的なものでは、神戸市は大阪市に劣位にあるが、実際の開催実績を見ると、大阪市を圧倒している。なぜ神戸が選ばれているかというと、やはり大阪の施設より、神戸の施設の方が便利で集まりやすいからだと考えられる。「神戸で開催すると参加者が増える」という評判まであるようだ。神戸で行われる国際会議等は、実質的な利便性に基づく実需なのだ。したがって、大阪の中心部からさらに遠い埋め立て地に国際会議場を建設しても、おそらく長期的には、神戸の需要と競合することにはならないだろう。また、カジノが周辺にあるリゾート施設の中で学術会議を行うだろうか。

 したがって、大阪にIR構想に基づき国際会議場が建設されても、神戸市が目指している方向とは全く異なるので、神戸市のコンベンション都市構想に対する脅威とはならないだろう。神戸市は、参加者の安全・快適・機能性を追求すればよく、大阪のIR構想の影響を考慮して構想を縮小したり、見送ったりする必要はないと考える。