人の流れと都心のにぎわい(1)

 久元市長は22日の定例記者会見で、神戸市役所本庁舎2号館の建て替えについて説明した中で、次のように述べた。

 (久元市長は)神戸都心の活性化について「人の流れを生み出していくということ」との見方を示した。三宮、旧港湾部(ウォーターフロント)、旧居留地、元町と「魅力のある場所はたくさんあるが、そこから人の流れが生み出されていないというのが、都心のにぎわいにとっての課題だった」と指摘。「ウォーターフロントと三宮方面といった、南北の人の流れを生みだすことを考えたときに、2号館には民間活力を導入した、にぎわいを生み出す施設が必要ではないかと考えた」と説明した。

(神戸経済ニュース2019.8.22)

 人の流れとは何だろうか。

 「魅力のある場所はたくさんあるが、そこから人の流れが生み出されていない」という捉え方は、本来、魅力ある施設があるのに、「流れ」がないため人が滞り、その施設に訪れる人が少ないという考え方で、その改善のためには、人が通行しやすいように、導線を改善したり、中継地点を設けて、「歩きやすい街」にすれば、すべての施設に満遍なく人が訪れるようになり、結果的に、観光需要が増加し、街ににぎわいが生じるという仮説である。

 この仮説は正しいのだろうか。

 人には来街の目的がある。意味もなく複数の目的地を「はしご」していくわけではないだろう。もしも、宿泊を伴うような観光地であると、訪れたついでに他の施設もこの際に見ておこうということもあるかもしれないが、神戸の場合は、観光客といっても、全国から人を引き寄せるだけの強力な観光施設があるわけでもなく、また、交通の便がきわめてよく、近隣からの日帰り観光客が中心なので、この際に他の施設も見ておこうということは生じにくいのではないだろうか。

 人の入り込みが少なければ点に見える。人の入り込みが多ければ線に見える。線は流れに見える。「人の流れがない」ということは、神戸には絶対的に入り込み客が少ないということを物語っているのではないだろうか。

 したがって、導線の改善を行って、歩きやすい街というのは、都市の活性化という観点から言うとあまり意味のある施策ではないように思われる。現状は人が滞っている、滞留しているわけではない。人の入り込みそのものを増やすこと、魅力ある施設を増やすことが大切だと考える。

 現象を表面的に捉えるのではなく、原因を突き詰めて、正しいポイントで努力を行うことが大切である。