神戸市のふるさと納税施策

 全国の主要市区で2019年度、ふるさと納税の影響で流出する住民税の金額(税額控除額)が前年度比で2割以上増えることが日本経済新聞の調査でわかった。金額では約1600億円に上り、横浜市や東京都世田谷区など首都圏の流出が目立つ。返礼品競争でふるさと納税が拡大する一方、都市部の自治体の財政への打撃が大きくなってきた。(日本経済新聞 2019/5/22)

 同紙によると、ふるさと納税の影響で流出する住民税の金額は、神戸市は43億円(前年度比33.2%増)と膨大な額になっている。ここでも神戸市は、全国ワースト6位だそうだ。これだけの財源があれば、どれだけのことができるだろう。まったくもったいない話だ。

 ふるさと納税は、ある自治体に寄付を行うと返礼品がもらえ、その寄付に対して、住んでいる自治体から2000円を除いて、税金を取り戻すことができる。つまり、税金を右から左に動かして、2000円を負担するだけで、返礼品を手に入れることができる。結果的に、その返礼品に充てる費用は住んでいる自治体が負担していることになる。

 ふるさと納税は、おかしな制度だ。寄付といいながら、本人が負担するのは2千円だけだ。税金を右から左に移すお礼として、移した金額に比例して多額の返礼品がもらえるという、高額所得者に有利な制度だ。基本的には税金でとりもどすことができるため本人にはほとんど負担がなく、はたして、これは寄付と呼べるのだろうかという代物だ。しかしながら、一個人としてみれば本人の負担はごくわずかなので、経済合理性の観点に立てば、ふるさと納税は行わない手はないわけだ。それが、ふるさと納税が拡大する理由だ。

 ふるさと納税による多額の税源喪失を防ぐにはどうしたらよいだろうか。答は、ふるさと納税にあまり美しい理想を求めないことだ。一般の人の寄付は、おそらくは、ふるさとへの応援などではなく、税金の一部を品物に交換する目的で行われている。寄付する側の選択としては、例えば神戸ビーフのような、自分では買わないが、ふるさと納税を使って食べてみたいというような選択もあるだろうが、一般の庶民は贅沢をするよりも、現金に近いものに交換をして「節税」したいという選択が多いのではないかと考える。泉佐野市でアマゾンギフト券を返礼品とした結果、受入額が497億円にもなったというのは、そういう選択をする人が多かったというということを裏付ける。

 したがって、神戸市としても、現金に近い性格のもの、たとえば、日々の日常用品の購入に自らの財布から支出する現金を節約できる返礼品を考えればよい。一案としては、日常用品に相当するものを返礼品にすればよい。つまり、生活費の中で必要な消費品目を返礼品にすればよい。たとえば、米や酒、食品、衣料品等など。そう考えると、神戸は大都市近郊にあって消費財を豊富に供給している都市だから、返礼品目には事欠かない。そうした日常品のパッケージを返礼品にすればよい。

 要は、返礼品に日常の消費財をメニューに多く用意しておけば、節税目的で寄付する漏出が防げると考える。