本四架橋のもたらしたもの

 本四架橋のもたらす効果について、本四高速がまとめたレポートがインターネット上で公開されている。これを読むと、本四架橋の建設は、西日本の交通事情に絶大な影響を与えたことがわかる。

https://www.jb-honshi.co.jp/corp_index/company/pdf/seibi7.pdf#search=%27%E6%9C%AC%E5%9B%9B%E6%9E%B6%E6%A9%8B+%E3%81%8F%E3%82%89%E3%81%97%27

3時間圏域の変化

 ⾼速道路ネットワークの整備により、瀬⼾内地域などの主要都市からの3時間圏域は大きく広がりました。
 例えば、昭和60年当時では徳島市から3時間で到達できるのは淡路島まででしたが、現在では神⼾・鳴⾨ルート、児島・坂出ルートを利⽤することにより、⼤阪府・兵庫県・岡⼭県の⼤部分に到達できるようになっています。

 本四架橋が建設された結果、神戸市から香川と徳島の両県が3時間圏となっているが、岡山県は、四国4県の県庁所在地が3時間圏となっている。その結果、西日本の拠点性のバランスに大きな変動がもたらされた。

中四国の物流ハブとして機能が高まる岡山県

高速道路ネットワークの東⻄と南北が交差する岡⼭県は、物流のクロスポイントとして重要度が増加しています。
瀬⼾⼤橋開通後は、早島IC付近で物流関連施設の⽴地が増加し、近年では岡⼭総社IC付近で大手通販会社の物流関連施設などが新設されており、岡山県の倉庫面積は中国地方で第1位です。

 岡山の中四国における物流拠点性が高まり、岡山県の倉庫面積は広島県を抜き、中国地方で第1位となる劇的な変化をもたらした。

本州・四国間の高速バス便数の推移

本州・四国間を結ぶ高速バスは、平成10年の神⼾淡路鳴⾨⾃動⾞道全通以降、京阪神と四国を結ぶ路線を中⼼に大幅に増加し、平成29年では1⽇往復375便となっています。
神⼾淡路鳴⾨⾃動⾞道を経由する便は、1⽇往復313便で、全体の約83%を占めています。

 また、四国の人々の生活圏にも大きな影響があった。瀬戸中央自動車道が開通した当時は高速バス路線はわずか20数本であったが、明石海峡大橋の完成から高速バス路線が急速に拡大し、現在、神戸淡路鳴門自動車道が本州側最大の幹線となっており、全体の8割以上を占めている。四国は中国地方を離れ、京阪神との結び付きを強めている。

 

 このように、交通インフラの建設は、都市の拠点性、人々の生活圏に重大な影響を及ぼすことがわかる。本四架橋3ルート建設をしたことに批判はあるが、この結果を見れば、架橋の誘致にはそれぞれの都市の浮沈がかかっていたのだ。

 神戸市は、地理的な条件も幸いし、明石海峡大橋の誘致に成功した。もしも、この事業の誘致に失敗をしていたら、神戸市の衰退は決定的であったろう。明石海峡大橋の建設の意義は、単に神戸市が四国との玄関口になるにとどまらず、西日本との玄関口となることの可能性を残したことだ。神戸市は、その幸運をよく認識するべきであろう。

 交通インフラの誘致は、都市の命運を左右する極めて重大な問題であることを考え、慎重に事をなさなければならない。