神戸市取り戻し政策

 神戸市は人口152万人の大都市であるが、地方に行くと、人口は神戸市ほどではないが、街並みを見ると神戸市よりも立派な都市に遭遇することが少なくない。これは、神戸市は大阪に隣接しているため、神戸市内で発生する需要が、大阪市にかなり漏出していることが原因であるに違いない。 そのため、神戸の都心は、人口の割に官庁や企業などのオフィスが少なく、見た目が不相応に貧弱になっている。

 神戸市の戦略として、外部から神戸市に人を呼び込むことに力を入れるのはもちろんであるが、神戸から発生している需要の外部への漏出を取り戻すことに真剣に取り組むべきだ。神戸市民の需要は、神戸市内で処理できるように考えなければならない。つまり、需要の囲い込みである。

 この需要の囲い込みは、近年、周辺都市でも積極的に行っているように見える。姫路市明石市などの駅前の再開発、西宮北口のガーデンズなど、従来は、神戸市の都心が担っていた商業機能を自前で賄うようになってきており、これが神戸市の地盤沈下に拍車をかけている。だから、神戸市は、これらの動きに対して対策を講じなければならない。

 方策の一つは、神戸の広域的機能の強化である。神戸市の優れた広域交通機能を活かして業務や商業の高度化を図り、周辺都市では提供できないような、高度な需要に応じられるようになることである。そのためにも、早期に三宮再開発を完成させなければならない。

 もう一つは、神戸から大阪に流出している需要の流出の防止と囲い込みである。

 では、どういう分野で需要の漏出が発生しているだろうか。雇用の面で、大阪で働き、神戸に住んでいるような場合。消費の面で、大阪のデパートで買い物をする場合。娯楽や文化の面で、神戸には適当な会場がなく、コンサートやエンターテイメントは大阪へ行くことが多い。交通の面で、新幹線では、接続の不便さから新神戸駅よりも新大阪駅が利用されることが多い。海外旅行については、神戸空港の運用が制限されているため、関西国際空港を利用せざるを得ない。このように、あらゆる分野で需要の漏出が生じている。

 これら、神戸市内で生じる需要を取り戻す観点から、神戸市は政策を考えるべきだ。