北神急行 事業譲渡問題(その4)

 新聞の報道によれば、北神急行の資産は400億円、負債は約650億円で、250億円の債務超過である。一般に、企業の買収を行う場合は、資産と負債との差額の純資産を買収額として算定するのが基本的な考え方である。今回の事業譲渡では、資産と負債を切り離し、資産だけを神戸市が買い取る形である。つまり、北神急行の企業買収ではなく、北神急行清算である。今回の枠組みでは、神戸市が400億円の資産を半額の200億円で買い取り、650億円の債務は引き継がない。すると、譲渡後の阪急側のバランスシートは、資産200億円/負債650億円 となり、純負債は450億円となる。本来なら、資産を買い取る者がいなければ、簿価上の評価額がいくらであれ、実現する価値はゼロである。つまり、今回の枠組みの実態は、本来、債務超過で、引き取り手がない北神急行清算に神戸市が関与し、650億円の債務の約3分の1を負担するかわりに、資産を神戸市が譲り受け、営業を存続させるというものであろう。

 したがって、この話は、報道されているように神戸市から申し出たものではなく、阪急側が神戸市に申し出たものであろう。単なる清算では、神戸市側としては、資金を出す理由がないため、市営地下鉄に編入し、運賃を大幅に引き下げ、人口減少に陥っている北神の活性化を名目にしたということだろう。この枠組みは、だれが考えたのだろうか。おそらく、神戸市に、そのような戦略を構想できる者はいないだろうから、阪急側から提案されたものだろう。そして、成果を求める久元市長のトップダウンで決定されたものだと推測する。

 さらに、これは市営地下鉄と阪急電車相互直通運転に結び付くものではないかという憶測がある。しかし、久元市長は、ポートライナーの8両化に要する数百億円でも決断ができないぐらいだから、相互直通運転のようなより大規模な問題の判断ができるとは思えない。したがって、今回の事業譲渡と市営地下鉄と阪急電車相互直通運転の問題とは無関係と推測する。