大阪について

 神戸の競合都市として、常に大阪の存在が問題となるが、ここで重要なことは、一般のイメージに反して、大阪は、現代においては必ずしも交通の絶対的な中心地とは言えないということだ。

 大阪は、かつて「天下の台所」として我が国経済の中心地として君臨した。これは、大阪が瀬戸内交通と淀川等の河川水運との結節点という並びない広域交通の要衝にあったことが理由と考えられる。ところが、明治時代以降、鉄道が河川水運に取って代わり、また海上交通においても、大河川の河口にあることが災いして土砂の堆積が激しい大阪港は大規模な船舶の入港に適さず、その中心地を神戸に明け渡すことになった。大阪の地理的条件は、河川が交通の主役の時代においては最も優れたものであったが、河川交通が衰退すると、日本の中心軸からはやや南寄りで、鉄道の敷設においては大河川を跨がねばならないということがかえって不利に転化したと考えられる。

 現在の大阪を地勢的に見ると、北には京都があり、西には神戸があり、また東には名古屋があるので、大阪の独占的後背地としては奈良と和歌山だけということになり、大阪は近畿圏の南部を後背地とするローカル都市という見方もできる。大阪が長期にわたって相対的地位を低下させ続けている理由は、かつての広域交通の絶対的優位を失ったこと、周囲を大都市に囲まれ後背地が限定されていることの二点にあると考える。(東京が、周囲に競合する大都市がなく、都市圏を拡大させ続けているのとは好対照だ。)

 一方、神戸の立地条件について考えると、兵庫県を除く大阪以東の近畿圏の人口は1500万人、兵庫県以西の中国・四国地方の人口は1700万人で、神戸は西日本の「人口の重心」に当たる。神戸は西日本全体に開かれ、広域的な拠点を置くにふさわしい条件を持っている。(関西国際空港泉南設置と規制を受け続ける神戸空港の問題も、こうした視点に立って理解すべきと考える。)