神戸市の過去と未来

 神戸は国際貿易港である神戸港を中心に西日本の交通の主要な結節点にあり、いわば扇の要の位置に当たる。神戸は、明治時代以降、大阪に代わる西日本の中枢(及び海外植民地統治の拠点)として開発された都市であると考える。東海道本線山陽本線の終着駅が他ならぬ神戸駅に置かれたこと、神戸税関の管轄は山口県を除く中国、四国全域であること、第5管区海上保安本部が、瀬戸内海東部及び和歌山、四国沖までの広範囲を担任水域としていること等にその名残を見ることができる。これまでの神戸市の本来的な役割というのは、そういうものであったのではないかと思う。近年、神戸市の相対的な地盤沈下が著しいと感じるが、これまでに蓄積された中枢都市としてのインフラ(広域の鉄道網、道路網、海上運送網 など)は、なお健在であり、現在でも、西日本の交通の中心となり得る条件を持っている。神戸市の復活の方向性は、やはり、これまで蓄積されたこれらのインフラを活用し、西日本全体の中で、いかに中枢機能を再蓄積させていくかという点ではないかと思う。

 神戸市はこれまで、こうした都市の特質を十分発揮させる施策を行なえて来ていたかというと、神戸市に新しい産業(ファッション、ワイン、観光、コンベンション、医療 等)を(特に新造成地に)移入しようとはしたが、都心部に中枢機能を集積させる努力は十分ではなかったように思う。その移入策がある程度成功したがために、かえって、中枢機能の低下という本質的問題を覆い隠す結果となったように思う。

 今優先すべき施策は、大阪湾岸道路の全線開通や神戸空港規制緩和等の交通基盤の整備とともに三宮への企業の西日本の中枢管理拠点の集積と考える。再び、神戸を大阪と並び立つ西日本の拠点都市にするという目標を明確に持って、それに資する施策を検討すべきだ。具体的には、三宮にそうした企業が入居できるオフィス街の整備が必要である。(それらの狙いを内外にわかりやすく伝えるための、具体的な計画やネーミング等も必要であろう。)