ルミナリエ2026について


 2年ぶりにルミナリエを訪れた。

 

 会場は、ホームページ等をみると、東遊園地、旧外国人居留地メリケンパークの3か所が表示されている。その他にも、街のところどころに小さなモニュメントが設置されており、会場マップには、メイン会場3か所と合わせて11か所のポイントが示されている。

 

 従来のルミナリエは、旧外国人居留地から東遊園地までの局所的な会場設定であり、元町駅方面から京町筋、明石町と、鉄柵に囲われた誘導路にそって九十九折(つづらおり)の長蛇の列を遅々と進んで、ようやく会場に入ることができるという状態であった。しかし、今回は、メリケンパークにも会場が設けられて広域化したため、来場者が分散し、従来のような行列はすっかり解消されていた。

 

 筆者は、神戸駅から地下街を抜け、ハーバーランドからメリケンパークに行くことにした。モザイクの通路を抜けてデッキに出ると対岸にメリケンパークが見える。そこには、燦然と輝く宮殿のようなルミナリエの作品が目に飛び込んできた。会場をメリケンパークに移すことによって、作品が様々なロケーションでの姿を見ることができるようになったのだ。ハーバーランドから海沿いの舗道を歩いてメリケンパークに入ると、大勢の観客が訪れていたが、さすがにメリケンパークは広く、人々が密集することなく、適度の間隔が保たれて、混雑に妨げられることなく自由に園内を通行することができた。

 

 会場には有料エリアが設けられ、その中に作品が構築され、周囲には一定の障壁が設けられ、進入が制限されてはいたが、有料エリアに入らずとも、十分に作品を見ることができる状態であった。それだけ作品が大きかったということでもある。今年は「海を望む宮殿」と題された作品であったが、一言で言うと大変すばらしい出来栄えであった。一昨年に見たときよりも、広さ、高さともかなり規模が大きくなり、またデザインは精緻かつ一層複雑となり、まさに天上の建築物のごとき壮麗さであった。BGMには、荘厳な教会音楽風の音楽が流され、非常に厳かな雰囲気が満ちていた。ルミナリエが始まった頃は、馬蹄形のフレームを幾十にも並べ、一方向からトンネル状に見る形式の作品であったが、今回の作品はその題名にもあるとおり、屋根、壁とに囲まれた建物様のデザインとなっており、様々な方向からその姿を鑑賞することができるものであった。

 

 次に、居留地の街路を抜け東遊園地の会場に入った。東遊園地の作品は「聖なるアプシス」と題され、一昨年に見た単なる壁掛け状の形式のものから、半円形のドームを組み込んだ立体的な形式に変化していた。一昨年の会場分散の際に、東遊園地の作品は、大幅な規模縮小となったが、今回の作品は、再び規模が拡張され、会場分散前のメイン会場に劣らない規模と構成であった。

 

 東遊園地には、神戸地元の企業や飲食店が出店し、飲食料品の提供を行っていた。以前あった、縁日の屋台のような出店がなく、この点も神戸らしくてよかった。

 一方、新たに開けた新港突堤方面の会場は、アリーナでのイベントがなかったせいか、閑散として寂しい状況であった。しかし、ここからも、メリケンパークの会場を海を挟んで見ることができ、もっと人が集まってもよいのではないかと思った。次回以後、できれば、メイン会場を、東遊園地、メリケンパークに加えて、新港突堤にも設置して、大規模な作品を展示すると、三角形状の会場配置になり、まさに街全体がルミナリエの会場となって人々が行き交うことになるのではないか。

 

 今回のルミナリエの全体の印象を述べると、まず、作品については、規模が再び大型化し、大きな会場で見劣りがしなくなったこと、作品の精緻化、複雑化が一層進み、大変美しく、見ごたえのあるものであったことが挙げられる。過去の作品と比べても最も美しい作品であったように思う。

 また、従来の長蛇の行列が解消され、観客が自由に順番や順路を選ぶことができるようになり、圧倒的にストレスが少なくなったと感じた。会場は混雑しているというほどはなく、安心してゆったりと回れる印象だ。

 会場に来場する人は、三ノ宮駅方面からが圧倒的に多いように思われるが、もっと神戸駅元町駅からのアクセスルートを周知してアクセス路の分散を図れば、より混雑が少なく、快適なのではないか。特に、神戸駅からは地下道を通ると、ほぼ信号のないルートであり、安全で高齢者や小さな子供にも利用しやすいのではないだろうか。それほどの距離でもないので、もっとお年寄りにも見に来てもらえたらよいように思う。気のせいか、会場に高齢者が少ないような気がした。ルミナリエの広告や前売り券の販売など、ネットが多用されており、それらが高齢者の足を遠のかせていないだろうか。ルミナリエ開催の趣旨から、だれもが参加しやすいということは重要だ。

 

 ルミナリエは今回が第31回の開催となり、いつのまにか長い歴史を持つイベントとなった。開催を重ねるごとに、当初の単純なデザインから、作品の規模、意匠とも複雑さ、精緻さが高まり、ルミナリエは、本当に神戸らしい、上品で上質な芸術祭としての完成度を備えるようになったように思われた。これだけの規模と質を兼ね備えたイベントであれば、きっと国際的にも十分アピールできるのではないだろうか。

 混雑の問題は、かなりの部分、解消したと思われるが、アクセスルートを中心に、警備員が数多く配置されている。正直、あれほど多くは必要ないのではないかとも感じられたので配置の見直しも必要であろう。さらに、来場者の導線を工夫すれば、混雑なく、もっと大勢の人受け入れられるのではないかと思われる。そうなれば、もっと積極的に広報を行って、来場者を増やし、街全体を舞台とする、神戸市民はもとより、国内、海外の観光客が集まって楽しむイベントになるのではないか。

 現在は1月30日から2月8日までの10日間の会期であるが、以前のような街を塞ぐような混雑もないので、もっと期間を延長し、1か月くらいは開催すればよいのではないか。

 

 

2026年1月18日 関西3空港懇談会について

 

 関西、大阪(伊丹)、神戸空港の役割を官民で話し合う「関西3空港懇談会」が18日、大阪市内であり、3空港を運営する関西エアポートの山谷佳之社長は、神戸空港の国際定期便について2030年4月の就航を目指す考えを示した。これまで懇談会が「30年前後」としてきた就航時期に初めて踏み込んだ。設置管理者の神戸市と協力して検討を進めるという。

 山谷氏は閉会後の会見で「一つの目標設定をした」と説明した。また、懇談会では、30年4月に神戸空港の運営権を民間企業に売却する「コンセッション」契約の対象に、国際線エリアを含める検討を提案した

(以下略)

 

神戸新聞 2026/1/18)

 

 

 2026年1月18日に、第15回となる関西3空港懇談会が開催された。

 同懇談会の報告が公開されている。

 

https://www.kankeiren.or.jp/material/260118houkokusho.pdf

 

 その中の、神戸空港に関わる部分を抜粋すると次のとおりである。

 

第15回関西3空港懇談会 報告

 

1.第14回懇談会以降の状況

(略)

 今回の懇談会では、その後の取組み等について、以下の内容が共有された。

(略)

 

(2)関西3空港の現状

(略)

 

神戸空港

 関西空港を補完する観点から、昨年4月に開業した第2ターミナルにおいて、東アジアを中心に国際チャーター便の就航が開始され、神戸市以西の市場開拓を含めた関西全体の需要拡大に向けたスタートを切っている。

(略)

 

2.関西3空港の次なる発展に向けて

(略)

 

神戸空港
 関西空港伊丹空港を補完する空港として、その機能を高め、神戸市以西の新たな市場開拓など、関西3空港の需要拡大に貢献していく必要がある。そのため、第12回懇談会の合意に基づき、関西3空港の運営主体の関西エアポートグループの経営判断を尊重しつつ、関係団体協力の下、同社グループ及び神戸市において必要な取組みを進める。

(以下略)

 

 

(2026 年1月18日 第15回関西3空港懇談会 報告(抜粋))

 

 現状の認識として、昨年(2025年)4月から国際チャーター便の就航が開始されたことを挙げている。

 今後の方向として、神戸空港関西空港伊丹空港を補完する空港として、その機能を高め、神戸市以西の新たな市場開拓など、関西3空港の需要拡大に貢献していく必要があり、第12回懇談会の合意に基づき、関西3空港の運営主体の関西エアポートグループの経営判断を尊重しつつ、関係団体協力の下、同社グループ及び神戸市において必要な取組みを進めることを確認している。

 

 今回の懇談会は、何か新しいことが取り決められたというより、過去の合意に基づいた取り組みの現状の共有と、今後の取り組み方針の再確認といった内容であったようだ。

 

 懇談会終了後の記者会見の中で、関西エアポートの山谷社長は、

(1)神戸空港の国際定期便について2030年4月の就航を目指す。

(2)神戸空港の「コンセッション」契約の対象に、国際線エリアを含めることを検討する。

 という2点を示した。

 これまで国際定期便の就航時期を「30年前後」としてきたことから、具体的な時期が明示されたことになる。

 

 一方、懇談会終了後、川崎神戸商工会議所会頭、久元神戸市長、斎藤兵庫県知事が記者の取材に応じ、その中での久元市長の発言を抜粋すると次のとおりである。

 

 今回の懇談会は何か新しいことが決められたということよりは、特に新しい飛行経路についての環境監視の現状の報告があり、神戸空港を含む3空港の現状についての報告と、今後の方向性が議論になって、報告という形で取りまとめられたという風に理解しております。これまでの方針に基づいて確認ということだと思うんですが、そういう中で、報告自体は関西エアポートグループと神戸市が連携しながら今後の対応をしていくというようなことが書かれています。正確な表現は後で報告をご覧いただけると思います。そういう中で、関西エアポートの山谷社長からは、2030年の国際定期便の就航、それからターミーナルビルのコンセッションに向けた検討を、神戸市と協議をしながら取り組むというようなお話がありました。これは神戸市としては大変ありがたい発言でございまして、よく関西エアポートと相談して、国際定期便の飛行が2030年に確実に行われる、神戸市としても必要な対応をしていくというふうに考えております。

 

 

 やはり国際チャーター便の運行をしっかり安全確実に行っていくと、その先に定期便の就航が確実に行われるということになりますから、そこは関西エアポートさん、神戸市も含めて、しっかり対応していくということだと思います。あとは、今の第2ターミナル、去年の4月18日に、スタートしたわけですが、これでは定期便の就航が1日20便ですよね、定期便は。これには間に合いませんから、拡張ということを行って、その際、関西エアポートさんの言うことをしっかりよくお聞きしながら、計画を作っていくことになると思います

 国際線エリア部分のコンセッションということも山谷社長から提案がありましたので、これも双方で協議をしていくということになると思います。

 

 

 新たに整備する、いずれにしてもそのターミナルが必要になりますから、第2ターミナルそれから今のターミナルを拡張するということになるのか、新しく作ることになるのか、それは表現の仕方の問題ですけれども、いずれにしても、その近くにですね、隣接した形で作るというです。

 

 

 早めに出したいという意味はとにかく間に合わせると、山谷社長から2030年というお話がありました。2030年というのはあと4年ですから、そんなに時間はありません。ですから早めにという意味はとにかく間に合わせるべくスピード感を持って進めるということですが、これは今日もお話がありましたように、関西エアポートさんとよく協議をして、内容を詰めていくということです。

 

 

 注目すべきは、太線の部分で、要するに、現在の第2ターミナルでは、1日20便の国際定期便の運用には間に合わないので、現在の第1、第2ターミナルを拡張するのか、新しく作ることになるのか、いずれにしても、その近くに隣接した形で新たなターミナルを作るという考えを示している点である。それにあたっては、関西エアポートとよく協議して内容を詰めていくとしている。

 この発言を見ると、第2ターミナルは、あくまで国際チャーター便を万博開催に合わせて早急に受け入れするための臨時的、仮設的ターミナルであったようだ。国際定期便の就航の際には別途ターミナルを整備するという考え方は、2023年5月10日の久元市長の会見の中でも示されていた。

 

(参考)神戸市長会見 2023/5/10

記者:今回新しく整備する新ターミナルなんですが、これは、国際チャーター便及び国内線の40回の拡大分、これを対象にしたターミナルという位置づけでよろしかったでしょうか。

久元市長:そうです。

記者:市長がおっしゃっているように2030年前後には、国際定期便の就航の方針だと思うんですけれども、こちらのターミナルが定期便においても活用するという位置づけなんでしょうか。


久元市長:いえ、国際定期便、2030年頃の就航を想定している国際ターミナルは、別途これは整備することを予定しております。別途整備をいたします。

記者:それはやっぱり旅客ターミナルの東側に貨物ターミナルがあると思うんですけど、あの辺りが定期便の就航場所として想定されるということなんですか。

久元市長:現時点は未定です。これから並行して作業しなければいけないと思いますが、もう少し空港のエリアの様々な施設配置を検討した上で、国際定期便に利用される新たなターミナルの絵を描いていきたいと思いますが、今現時点ではまだ具体的なプランはありません。

 

(神戸市長会見 2023/5/10)

 

firemountain.hatenablog.jp

 

 今回、神戸空港における国際定期便の就航時期が2030年4月と明示されたことは、水面下ではかなり具体的な話として進められていることが窺われる。

 

 こうした背景には、昨年4月から始まった国際チャーター便の運用が順調であることがあると考えられる。

 

 神戸空港の2025年の旅客数が405万9839人に上り、06年の開港以来、初めて400万人を超えることが確実となった。関西エアポートが13日公表した利用状況の速報で明らかになった。4月に解禁された国際チャーター便の旅客(40万5229人)が寄与し、これまで最多だった24年の357万6118人を14%上回り、3年連続で過去最多となった。
(以下略)

 

神戸新聞 2026/1/13)

 

 神戸空港の旅客数が、開港後初めて400万人を超えることになった。4月に運用が始まった国際チャーター便の旅客数は40万人を超え、これが大きく寄与することになった。

 

 久元市長は「とにかく間に合わせるべくスピード感を持って進める」と述べているが、神戸空港の今後の飛躍を見据えて、長期的な視点に立ち、将来の発展の礎となるような大きな構想を描いてほしい。

 

 一方、次のニュースも飛び込んできた。

 

ANA関空発着の国内線を大幅縮小 赤字4路線は運休

 全日本空輸ANA)は関西国際空港発着の国内線を現在の1日あたり5都市12往復から大幅に縮小し、羽田便のみの1都市5往復とすることを決めた。3月29日以降の夏スケジュールで、赤字が続く札幌や那覇、沖縄・宮古、石垣を結ぶ4路線を運休する。ANAは「急激なコストの増加によって赤字幅が拡大し、今後も黒字化を見通せない」と説明している。

(以下略)

 

毎日新聞 2026/1/24)

 

2026年度 ANAグループ航空輸送事業計画を策定|プレスリリース|ANAグループ企業情報 

 

 これは、2026年度のANAグループ航空輸送事業計画として発表されたものであるが、羽田便を除き、関西空港発着の国内線をすべて運休するという内容である。これに対して、神戸空港の東京(羽田)便、札幌(新千歳)便、沖縄(那覇)便については減便されることなく存続となった。これは画期的なことである。一地方空港として発足した神戸空港が、国内主要航空会社であるANAの就航便数において関西空港を上回ることになったということである。この動きの意味するところは明らかではないが、伊丹空港とともに今後の同社の関西の拠点として、神戸空港の重要性がますます高まってくるのではないかと予想される。

 神戸空港の発展は予想を超えるスピードで進んでいる。

 

 3空港の運営一元化が始まって数年が過ぎ、次第に明瞭になってきたことは、3空港はそれぞれ明確な特性があるということだ。

 国土軸から大きく南に偏する位置にある関西空港は、神戸空港伊丹空港と比べて利便性の点でどうしても劣る部分、獲得できない性能がある。この性能を押し殺すことなく、存分に発揮させることが関西圏全体の航空機能の最大化にとって重要だ。関西空港がハブになるのではなく、関西圏全体がハブとなるべきなのだ。

 

 

 

 

 

六甲山について

 神戸市民にとって、六甲山はとても身近な山だ。

 街を歩くにつけ、電車に乗るにつけ、六甲山の姿を眺めることができる。というのも、神戸の街は、六甲山系が西から東へと山塊が屏風のように連なり、南側に面する大阪湾との間わずか数キロ幅の細長い土地に市街が開け、人々はその東西を往来しながら生活をしているからだ。六甲山の姿を眺めるというよりも、むしろ、六甲山からいつも見下ろされていると言った方が正しいのかもしれない。

 六甲山が地理感覚に与える影響は絶大で、神戸で暮らす人々にとって山といえば北側、海は南側と決まっており、それはもはや方角を指し示す言葉として、「山側」、「浜側」という言葉が、ごく日常的に使われている。そのことは極めて便利な反面、神戸の人々が他の都市を訪れると、とたんに方向感覚がおかしくなってしまうというのは、あながち冗談ではない。

 神戸の街に生まれた人は、物心がつくと坂道を下っては上る生活がはじまり、それが始終ついて回る。というのは、だいたい、住宅地は山裾の高台に開かれるが、一方、鉄道や主要幹線道路は平地を東西に走行し、学校もまた山裾の高台にあるからだ。このように、重い教科書や運動着などを鞄に詰め込んで、坂道を上り下りするのが、神戸の学生の日常なのだ。

 六甲山に上るには、山上と市街地とを結ぶロープウェイが3本、ケーブルカーが2本も敷設されている。山上に上がるとそこは驚くほど平らで、ホテル、牧場、遊園地、スキー場、郵便局、小学校まである。山上は市街地より5〜6度気温が低く、夏の避暑地であったり、スキー場があるのはそうした理由からだ。そのため、冬の訪れも市街地より早く、六甲山小学校のストーブの火入れ式のニュースが毎年の風物詩となっている。

 山は、市街地のすぐ背後にあるので、毎日登山などという習慣も広く行われている。また、六甲山系を西から東に、須磨の鉢伏山から宝塚まで、50キロ余りを一日で走破する六甲縦走という行事があり、学校の行事にも組み込まれ、一度は経験をしたという人は多いだろう。

 

神戸市:【六甲全山縦走大会】コース説明

 

 そうした身近な六甲山ではあるが、山頂の標高は931mと1000m近い高さを誇る急峻な山岳であることは意外と知られていない。海岸近くにこれほど高い標高を持つ山は日本全国を見渡しても稀であると言われている。そのため、六甲山を超えようとする自動車のブレーキが過熱して、制御不能となる事故が後を絶たない。

 しかし、このように海岸近くにそびえ、海と市街地を見下ろす独特の地理的な構造が、六甲山の素晴らしい眺望と1000万ドルと称えられる夜景を作り出している。

 

(六甲山の眺望:市街地とその先に淡路島を臨む)

 


 国内を見渡してみて、海の近くにそびえ、大きな存在感を持つ山の例としては、鹿児島の桜島が思い起こされるが、その山頂の標高は1117mである。それと比べて六甲山の標高もかなりのものだといえるが、六甲山はあくまでも身近な山で、桜島のような圧倒的で雄大なイメージはない。

 雄大なイメージどころか、六甲山の姿そのものを思い起こすことができる人があるだろうか。試しにネットで検索してみると、六甲山の画像として挙がってくるものは、六甲山そのものの姿ではなく、ほぼ六甲山から見下ろす下界の眺望である。六甲山は、「見上げる山」ではなく、圧倒的に「見下ろす山」であるといえる。

 とはいえ、六甲山は神戸のシンボルともいえる山なのだから、神戸の人々はもっと六甲山の山影に意識を払ってもよいのではないだろうか。

 先ほどの例でみた桜島であれば、城山公園や仙巌園(磯庭園)など市街地から海をはさんだ遠景と、湯之平展望所のような近景の山体を観望するポイントなど、複数のポイントがある。六甲山にもそのような山体を観望するポイントはあるのだろうか。ポートアイランドに「しおさい公園」があるが、山は個性のある存在ではなく、単に都市の背景として捉えられているにすぎないように思われる。六甲山を、一つの「山」として、その姿を鑑賞する、そうした観望地を定めることが試みられてもよいのではないか。それは、神戸の人々のシビックプライドの醸成だけではなく、観光振興にとっても有益だと思われる。

 

 筆者は、六甲山の山体を眺める観望地として、六甲山頂と六甲ケーブル山頂駅付近を臨む住吉川沿いを六甲山の観望地として推薦したい。住吉川は急峻な六甲山が作り出す天井川で、神戸の代表的な河川である。JR住吉駅の東側では線路の上を川が流れているという光景を見ることができる。住吉川は、ビルが建て込む市街地にあって、遮られることのない南北の視界を確保し、その先に六甲山の山体がそびえる。川は六甲山に源流を発し、川筋は谷を穿ち、刻まれた谷が時々刻々、春夏秋冬、朝夕の様々な陰影を描き出す。その景観が六甲山系で最も雄大で美しいのではないかと思うからだ。

 

(六甲山の山景:住吉川から山頂付近を臨む)

 

 東西に長い六甲連山であるから、こうした観望ポイントは複数の候補が挙がるに違いない。それらを取りまとめ、周知すれば、それを巡る楽しみも考えられるのではないだろうか。

ハンター邸の帰還

 

 かつて神戸市中央区の北野異人館街にあった最大規模の洋館で、市内の別の場所に移築された「旧ハンター住宅」(神戸市灘区、重要文化財)が、半世紀を経て元の地域に戻される見通しとなった。異人館街の再活性化が目的で、市が来年2月にも解体許可を文化庁に申請する。文化庁によると、移築された重文建築物を移築し直すケースは珍しい。関係者は「北野を代表する新たなシンボルに」と期待している。

 

(読売新聞 2025/11/28)

 

 旧ハンター住宅は、かつて神戸北野町にあった異人館で、1889年頃に建設され、1963年に王子公園内へ移築されて現在にいたる。現存する異人館の中で最大規模の邸宅で、重要文化財に指定されている。一般には「ハンター邸」と呼ばれているので、以下「ハンター邸」と記載する。

 

神戸市:国指定重要文化財「旧ハンター住宅」

 

 このハンター邸は、王子公園再整備計画に伴い、再び解体し、移築されることになった。移築については、異人館を、もともとの建設地ではないが、できる限りもとの建設地に近い北野町の一角に戻したいとの神戸市の意向もあったようだ。

 移築先は、もともと建設されたハンター坂より少し東側の北野町2丁目にある旧山口邸の敷地内が想定されているようだ。

 

 今回の移築については、神戸市の文化財保護審議会で議論され、その議事録が神戸市のホームページで公開されている。

 

神戸市:神戸市文化財保護審議会

 

 今回の移築案については、委員の間で必ずしも全面的な賛成が得られたわけではなく、賛否は分かれ、かなり手厳しい意見も出されたようだ。

 その議論の要旨をまとめると、次のとおりである。

 

(反対意見)

・移築行為そのものが文化財の価値を損なう

・旧山口邸が本来有している庭園景観や「見下ろす」構成、文化環境を破壊するおそれがある

重要文化財は本来移築すべきでなく、繰り返し移築すれば建物が傷む

 

(賛成または消極的賛成意見)

・王子公園に現状維持できない事情があるなら、解体・保管よりは旧山口邸への移築が現実的である

・旧山口邸の修復と組み合わせることで、文化財の「保存と活用」のモデルケースとなり得る

・庭園(園池・あずまや等)を含めた総合的保存を条件に進めるべきである

 

 賛否が分かれる中で「適当・不適当」を断定せず、反対意見も踏まえつつ、以下の点を条件として答申することで合意に至った。

 

(最終答申の骨子)

・旧ハンター住宅の耐震化工事を確実に実施し、旧山口邸敷地内の安全を確保する

・旧山口邸の保存を確実に行い、庭園の重要な要素を可能な限り残す

・旧ハンター住宅を旧山口邸へ移築する経緯を明示し、来訪者に説明する

・将来的には、旧ハンター住宅が元あった場所(北野町)への再移築や、旧山口邸庭園の旧状復元を検討する

・併せて、今回の諮問自体の妥当性についても審議が行われたことを付記する。

 

 以上のとおり、結論としては、ハンター邸は、北野町に移築されることが条件付きで認められたようだ。

 

 ここからは、筆者の意見を述べる。

 この審議会の議論でも指摘されているように、建築物は建築物単体ではなく、その建てられた場所も極めて重要な要素で、いわば建築物と敷地(立地条件、気候、風土など)とは本来的に一体のものではないかという考え方は、よく理解できる。

 筆者はかつて、愛知県にある明治村を訪れたことがある。明治以降に建てられた貴重な近代建築物が園内に多数保存されており、きわめて価値のある施設であることは間違いない。しかしながら、何か、生きた建築物であるという実感が持てなかったことも否定できない。それは、現に、実際に人々の生活やその用途から切り離されてしまっているということは大きな理由であるとは思うが、もう一つ、その建物のロケーションの問題が大きいのではないかと感じた。

 例えば、明治村には神戸の異人館も保存されており、神戸山手西洋人住居という建物がある。しかし、それは北野町のロケーションとは全く異なる丘の上に、大きな湖を臨む場所に独立して建てられている。それは、確かに建築物としては、まぎれもない北野の異人館ではあるが、北野の坂道、路地、背後の六甲山、南に広がる神戸港と切り離されたそれは、全く別物であると感じた。長崎の異人館(長崎居留地二十五番館)も移築されていたが、やはり、同様の印象を持った。その他の建築物も、それが建っていた街から切り離されて、どこか違和感を拭い去ることができなかった。

 

 今回の北野町の移築は、北野町への帰還という意味では、より正しい方向への解答なのかもしれない。しかし、十分、慎重に行われるべきである。できるならば答申にあるように、もともとそれが建てられた場所に、長時間がかかっても、戻すことが、神戸の街の百年の大計としては、欠かすことができないのではないかと感じる。

 

メリケンパークのドローンショーの可能性

神戸メリケンクリスマス(ドローンショー)

 

ドローンショー : MERIKEN Xmas Drone Show ー希望の灯(ともしび)と海の光ー

 

 約500機のドローンが夜空に織りなす光のシンフォニーが、メリケンパークの冬の夜を幻想的なキャンバスに変えていきます。一つひとつの光が音楽に呼応しながら織り成す物語は、見る者すべての心に温かな灯をともすでしょう。神戸の港に降り注ぐ幻想的な光のショーをぜひ体験してください。

 

(神戸市HP)

 

神戸市:神戸メリケンクリスマス(ドローンショー)

 


www.youtube.com

 

 12月20日から12月25日にかけてメリケンパークでドローンショー(神戸メリケンクリスマス)が開催された。

 ドローンショーは、数百から数千機のLEDライトを搭載したドローンをコンピューターで制御し、夜空に文字、図形、アニメーションなどを描く光のアトラクションである。

 

 ドローンショーを行うにあたっては、次のような条件が必要とされる。

(1)多数のドローンが飛行するのに障害のない大空間が必要である。

(2)ドローンの落下・逸脱時に安全が確保できる安全距離を確保できる場所に観客エリアを設けることができること。

(3)大勢の観客を安全に収容、誘導できる広いスペースがあること。

(4)飛行エリアの周囲にも高い建物などがなく、漆黒の背景が確保できること。

(5)多数の観客を動員するためのアクセスが十分であること。

 

 この条件は、神戸のウオータフロントエリアに極めて適した条件だ。

 要するに、ビルや架線等により、飛行や視認が妨げられない、広大な空間が必要であり、その背景にも高層ビルの明かりなどが入り込まない環境が求められるのだ。

 メリケンパークやハーバーランドポートアイランド西北岸など、この条件を満たす場所は十分にある。
 おまけに、神戸のウォーターフロントは、交通のアクセスも抜群であり、市街地に隣接するところにあって、家族づれからお年寄りまで、だれでも簡単に足を運ぶことができる。

 さらに、神戸の市街地は港を囲むように広がる坂の街でもある。そのため、街中からでも港が見える地点がいくつもある。また、高層ビルで港が見えるビルならば、このショーを見ることができたはずだ。

 今後開催する場合には、メリケンパークの会場だけではなく、鑑賞スポットとしてビーナスブリッジの金星台や摩耶山の掬水台、北野町、元町通、ポートアイランドなど、事前に十分宣伝して、市街地全域から鑑賞する街ぐるみのイベントにすればより楽しいのではないか。また、BGMなどもライブ動画として配信すれば、遠くからでも、音声付きのショーを楽しむこともできる。


 このように、神戸は、京阪神の大都市圏にあって、すべての条件を兼ね備えた、全国的にも有数のドローンショーの適地であると考えられる。

 

 今回、特筆されるべきは、ショーの中にスポンサー名が描き出されたことだ。ドローンの強みは、一定時間の静止映像を夜空に描くことができることだ。つまり、ドローンショーは、巨大な広告塔になりうるのだ。これが意味するところは、ドローンショーは、スポンサーがつくならば、観客から料金を徴収することなく、開催することができるということだ。

 これが軌道に乗るならば、商業ベースでドローンショーが、継続的に開催できることになるだろう。評判が高まり、神戸のドローンショーが定番の観光アトラクションになるなら、恒常的にますます多くの人が集まり、広告価値も高まり、より多くの広告収入が得られることになる。広告収入が十分賄えるなら、ますます大規模なショーを行うことができるだろう。

 

 

 今後、ドローンショーの技術進歩や大規模化が予想される。今回のメリケンパークのショーは2次元映像であったが、関西万博で見られたような3次元映像や、花火やレーザー光線の併用などショーの複雑化が進んでいくだろう。継続的に実施することによって、ますます見ごたえのあるショーに進化していくことが期待できる。

 今回のドローンショーは、神戸のウォーターフロントが目指す、大規模エンターティメントゾーン化が新たな段階に達したという意味で特筆すべきである。神戸のウォーターフロントは、大きな可能性を持っている。今後、ドローンショーをはじめ、様々なエンターテイメントが商業ビジネスと融合して、神戸があらたな都市型エンターテイメントの中心地として発展していくことを期待したい。

 

 

firemountain.hatenablog.jp

 

firemountain.hatenablog.jp

 

神戸の観光戦略について(神戸を拠点とする滞在・周遊型観光の提案)

 神戸って乗り換え便利!

 とにかく便利!アクセス抜群!神戸三宮からならどこへでも行けちゃう!おしゃれな神戸を満喫して関西を旅しよう!

 

(日本交通株式会社 高速バス の広告用リーフレット

 

 

 

 神戸の観光振興、観光客の誘致を促進する方策を考えてみた。

 一般に、ある都市における観光振興といえば、その都市にある観光資源を発掘、整備することと考えられるが、少し視点を変えて考えてみたい。題して、神戸市を拠点とする「滞在・周遊型観光」と名付けてみた。

 神戸は関西圏の一角にあり、周囲には我が国を代表する観光地がひしめき合う、おそらく国内最大の観光資源が集積する地域に位置する。周囲があまりにも強力な観光地に囲まれているため、神戸は、(神戸もすばらしい観光地であるとは思うが、)観光地としてはどうしても影が薄くなってしまう。このモデルは、神戸を関西圏あるいは我が国の一大観光拠点とすることを柱としている。

 すなわち、神戸に長期宿泊、すなわち「滞在」して、周囲にある観光地を巡る「周遊」を行う観光モデルである。神戸はそうした、「滞在」し、周囲の観光地を「周遊」するに最適な都市であると考える。なぜ、そのように考えるかというと、理由はいくつか挙げられる。


(1)神戸を中心に、1~2時間以内にきわめて強力な観光資源が集中している。京都、奈良などの古都、姫路城や彦根城、琵琶湖・竹生島等の国宝、USJ、天橋立、宮島(厳島神社)と、日本三景のうち二つまでが日帰り観光可能だ。神戸はこれらの観光地から中心地的な場所に位置している。(つまり、どこに行くにも便利な場所である。)

30分:大阪、明石、有馬(日本三名泉)
60分:京都、滋賀、姫路、淡路、岡山*
90分:奈良、福知山、広島*、名古屋*
120分:鳴門(渦潮、大塚国際美術館)、舞鶴、岩国(錦帯橋)*
150分:天橋立日本三景
180分:宮島(日本三景)*

 * は新幹線利用の場合

(2)実際に、神戸市民はこれらの観光地を観光するときは、まず、宿泊することはなく、日帰りで行くことが一般的だ。宿泊の必要性を感じることがないからだ。

(3)これを可能としているのは、神戸の交通の便が極めてよいからだ。JR神戸線京都線が一本で結ばれており、姫路から米原までが、新快速電車で高速かつ多頻度で結ばれている。阪急、阪神近鉄などの私鉄も三宮に乗り入れている。東京から鹿児島までが一本で連なる新幹線の新神戸駅にはすべての列車が停車する。そして、長距離バスの路線が西日本の主要都市とを結んでいる。現在、三宮に西日本最大級のバスターミナル(バスタ三宮)が整備されているが、これが完成すると、あらゆる方面のバスがすべて1か所から乗車できるため、わかりやすく、迷わず、きわめて便利である。

(4)関西圏、西日本には膨大な観光資源がひしめきあっているがため、とても1日や2日で見て回ることが難しい。遠方から何度も訪問することを考えると、こうした滞在・周遊型の観光は経済的にも合理性がある。

(5)京都や大阪はすでに観光地としても飽和状態であり、そこから少し距離がある、混雑の少ない、開放的で風光明媚な神戸で宿泊することは十分に合理的だ。混雑して宿泊費が高騰するそれらの都市と比べて、宿泊費用の点からも合理性がある。

(6)神戸(三宮)は、時刻表を意識する必要がほとんどない都市である。なぜならば、列車はほとんど待ち時間なしに次々とやって来るからだ。そのため、神戸には、「思いついたら」「時間ができたら」、すぐに出発できる自由さがある。この自由度も、神戸を滞在・周遊型観光の拠点とすることにふさわしい条件だ。

 

 このように、これまで、神戸が大阪や京都に近いため、日帰りで十分と言われていた条件を逆手にとり、神戸を関西圏、西日本の周遊観光のための拠点とする構想である。

 たとえば、関東や東北、北海道などの東日本の人たちが、関西圏、中国四国地方を周遊しようと思えば、神戸に宿泊し、連泊して大きな荷物はホテルに置いたまま、毎日、公共交通機関を使って、自由に気の向くままに周囲の観光地を巡ることができる。朝に出発し、半日行先の観光地を巡り、夜には神戸に戻って宿泊する。場合によれば、夜の神戸の街で神戸ビーフや中華料理、世界の料理を食べ、港を散策し、美しい夜景を楽しむのもよいだろう。翌朝には、神戸の街角の喫茶店でおいしいパンや珈琲、紅茶などの朝食を楽しむこともできる。考えてみれば、これらは神戸市民が日常的に享受している利便性そのものなのだ。

 期間は、2泊の連泊から、望めるなら5日、可能であれば1週間から2週間滞在すると、上記の観光地はおおよそ制覇することができるだろう。

 日程が長期になれば、中日(なかび)を設けて、神戸の市街地で散策したり、買い物したり、六甲や須磨など市内の観光地をめぐるのもよいだろう。

 こうしたスタイルの観光は、スケジュールの比較的自由がきく、学生やシニア層に適しているだろう。しかし、国内の観光客だけでなく、実は海外の観光客にこそ適合的であると考えられる。というのは、海外の観光客は長期の旅行日程を組んで来日する例が多いからだ。荷物も多く、1か所に長期滞在して観光するのは合理性がある。また、来日すること自体、時間もかかり、費用も高額になる。そうそう度々やって来ることも困難であるから、一度にあちらこちらを周遊することは合理的だ。外国人の観光客であれば、滞在中に、六甲山の早朝登山なども、人気があるかもしれない。

 神戸は外国人観光客、特に欧米の観光客に魅力がないといわれるが、海外旅行の魅力は観光地を見ることだけではない。それと同等、それ以上に、その国の日常の生活、文化を体験することも大きな楽しみのはずだ。神戸は日本の縮図といわれるほど多様性に富み、風光明媚で、明るく開放的で、また世界の食文化が集まる都市であり、日常品からブランド品まですべての買い物に対応でき、外国人にとって滞在するにきわめて便利な土地であるといえる。

 そのような神戸の属性は偶然ではなく、神戸が外国人を受け入れてきた都市であり、それこそが神戸を外国人が好んで定住をしてきた理由なのだろう。そうした歴史的な痕跡として、北野の異人館街がある。自分たちの先祖がはるか海をわたってきて、街を開き、定住し、文化を根付かせたという、歴史を物語る記念碑という位置づけを与えることができるだろう。その「祖先の歴史をたどる旅」、「異邦人の愛した神戸」という大きなテーマが成立しうるのではないか。このテーマの下に神戸への滞在・周遊モデルを普及させてはどうか。

 国内の観光客には、「おしゃれな神戸に住む体験」、これまで神戸を訪れた様々な人々のような「異邦人となる体験」を提供するという切り口もあるかもしれない。

 

 もしも、この滞在・周遊型モデルが普及し、神戸が関西地方、西日本の周遊拠点と認識されるようになるなら、神戸の宿泊需要が爆発的に増加することになるだろう。この宿泊需要の受け皿になるのは、三ノ宮駅から新神戸駅の間の地域が適地であろう。先日も、加納町の交差点の南東の空地に大規模なホテルチェーンが進出する計画が発表されたが、まさにそのさきがけといえるだろう。しかし、それだけでもまだ十分ではなく、こうしたホテルがもっと供給される必要がある。そうした方向性の下に新神戸駅周辺も再開発をすすめるとよいだろう。

 

 この構想の実現にあたっては、神戸を関西地方、西日本における滞在・周遊の拠点と認識してもらう必要がある。それには、やはり民間の事業者によるPR、たとえばホテル事業者や、旅行業者、交通事業者によるキャンペーンは重要だろう。

 

 このモデルを普及するには、旅行雑誌やインターネット動画等に、「関西の効率的な巡り方」という視点で記事にしてもらうのは有効ではないか。(従来、旅行雑誌が都市別、府県別になっていることが多かった。他の地方の人が思う以上に、関西圏の各都市は強い個別性を保ちつつ、関西圏として緊密に連携している。)

 また、旅行業者と連携して、神戸で一定以上の連泊をした場合に、なんらかの特典(地場産品のプレゼントなど)のインセンティブを設けることも考えられるかもしれない。

 

 

 滞在型の旅行になれば、これまで日程上カバーすることができなかった、小規模だが価値の高い観光資源にも脚光が当たることになる効果も考えられる。滞在日数が少なければ、どうしてもその地域を代表する観光資源が選択され、ある意味、定型化した表面を撫でるような観光スタイルとなってしまう。滞在型であれば、より幅広く、深い観光を行うことが可能となるはずだ。

斎藤知事 再選1年

(要約)

 斎藤兵庫県知事による公益通報者保護法違反等の疑惑をめぐる県政の混乱が続く。斎藤知事の行為は、公益通報者保護制度だけでなく、わが国の法秩序への信頼を著しく損なう重大な社会問題となっている。知事は、質問と異なる定型文の回答を延々と繰り返し、再選後1年経っても解決の目途が立たない。問題の根源は知事の「説明をしない」姿勢にあり、県議会は再度の不信任で県政を正常化すべきである。

 

 

 兵庫県知事選で斎藤元彦知事が再選されてから1年が経った。内部告発文書問題は収束せず、週1回開かれている知事の定例会見中にはいまも、県庁そばで知事への抗議活動が行われている。知事を支持する人たちとの溝は埋まらず、有権者の「分断」が続いている。
 県が設置した第三者調査委員会は3月、斎藤知事らによる「告発者捜し」などを「違法」と認定した。しかし、知事はこの結論を受け入れず、会見では記者と知事のかみ合わないやり取りが続く

(以下略)


朝日新聞 2025/11/21)

 

 

 斎藤元彦・兵庫県知事が県議会の不信任決議を受けて失職し、出直し知事選で再選されて1年がたった。記者会見で政策については歯切れ良く答える斎藤氏だが、自らを含めた疑惑を告発した文書への対応を巡る質疑などでは紋切り型の回答を続けている。記者会見の現場を報告する。

 「適切、適法、適正に対応している」

 斎藤元彦知事は再選から1年が過ぎた19日の定例記者会見で繰り返した。

 ただ、質問は県の対応についてではなく、公益通報者保護法の解釈を尋ねていた。同法は告発者への不利益処分を防止する措置を求めている。その場合、組織内部の窓口や行政機関への通報に加え、報道機関などに宛てた「3号通報」の告発者も対象に含まれるかどうか――。その答えが「適切」では議論がかみ合わない。

 ここには斎藤氏らの疑惑が文書で告発された問題が横たわる。

 

(以下略)

 

毎日新聞 2025/11/25)

 

 

 兵庫県の混乱は、斎藤知事の再選後1年を経過しても収まる気配がない。第三者委員会も認定している斎藤知事による公益通報者保護法違反の問題はきわめて重大である。決して、時間がたてば解消するという類の問題でない。それ故、議論が繰り返されることになる。

 この問題の社会的な影響は、公益通報者保護法に対する信頼感を著しく棄損したことであり、事実上、法律を無効化するというおそるべき効果を及ぼしている。そして、それは公益通報者保護法だけにとどまらず、社会全体の法秩序そのものへの信頼感を大きく破壊している。今回の兵庫県の問題の発生以後、全国で自治体のトップが不正の指弾を受けたときに、説明責任を果たさず居座る事例が頻発している。

 この問題は、単なる斎藤知事の「支持派」、「反対派」の争いではなく、「民主主義全体への脅威」の問題として、不可逆的に正常化される必要がある。

 

 実は、この間、この問題を解決できた人はただ一人しかいない。それは斎藤知事本人である。解決の方法とは、一つは「疑惑を十分に説明しきること」、もう一つは「疑惑を認め責任を負うこと」のいずれかである。もしも、このいずれかの努力があったなら、問題は解決に向かっていたはずだ。

 ところが、斎藤知事は、県議会や記者会見の場で、また第三者委員会、さらには国会の場で、さまざまな疑惑に対する指摘や質問を受けながら、それらを真正面から受け止めず、「真摯に受け止める」と言いつつ、質問に答えず、趣旨と異なる回答を繰り返し続け、一向に疑惑の解明に向かわない。通常、質問と回答をていねいに繰り返していけば、疑問は解消し、誤解が消え、いつかは正しい結論が得られるはずだ。少なくとも解決に向けて動き出していたはずだ。しかし、斎藤知事のような態度では、問題が解決することはありえない。

 

 つまり、兵庫県の混乱の問題は斎藤知事の問題なのである。

 

 斎藤知事は、なぜ質問に対して真摯に答えようとしないのか。議論を先送りしても、けっして問題が消えてなくなることはない。しかし、問題が解決されない間は、知事はそのままその地位にとどまり続ける利益を得ることができる。ここに、斎藤知事が議論をかわそうとする構図がある。知事が解決の努力を放棄して、その利益を受け続けることは許されることだろうか。

 

 1年間以上、兵庫県は混乱が続き、多くの犠牲を県民は払ってきた。斉藤知事にはもう十分な時間と機会が与えられたはずだ。客観的に言えることは、1年経っても、斎藤知事は問題を解決できなかったということだ。説明責任を果たさなかった責任は斎藤知事にある

 

 正当な議論が成り立たないところに民主主義はない。指摘されている疑惑は解明され、相応の責任を問われるべきだが、それを捨象するとしても、知事の「議論に対する誠実さ」という資質の欠如だけでも十分不信任に値する。つまり、「説明をしない」ということこそが、政治家として決定的に致命的な資質の欠如なのだ。斎藤知事が自らの問題を解消しないならば、あとは県議会がその責任を問うべきだ。それが二元代表制としての地方議会の役割である。県議会は再度の不信任を行い、県政を正常化すべきだ。県議会は自らの責任から逃げるべきではない。

 

 冒頭の記事にもあるように、兵庫県では有権者の「分断」が続いていると言われる。その表現には違和感を感じる。「分断」とは、一般に、意見や価値観の相違により、グループに分かれ、対立する状態を指す。

 問題の根本は、内部告発に対する斎藤知事による公益通報者保護法違反である。これについては、第三者委員会、国会等の議論でも、もう結論が出ている。斎藤知事の行為は「違法」である。もはや、問題についての意見を戦わす段階でなく、違法な行為を行った知事が、周囲の指摘に耳を貸さず、問題に真摯に向き合わず、質問から逃げ続け、その地位にしがみついて、なお知事として振舞おうとし続けているのが現在の状況だ。

 「違法」は不正常、異常であって、異常はすみやかに正されるべきものだ。その異常を支持する価値観と正常な価値観とが並列して対立するかのような「分断」という表現は妥当ではない。異常なものを異常なものとして捉えるのが公平な報道というものだ。